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春のバロックコンサート

2024/4/20 更新


 

日仏協会会長 藤川哲

 今回は、河本さんのヴィオラ・ダ・ガンバに、桑原さんのチェンバロ、山田さんのリコーダーを合わせた三重奏で、ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681-1767)の7つの楽曲を演奏するコンサートだった(他、アンコールが1曲)。
 河本さんは普段弾いていらっしゃるバス・サイズに加えて、ソプラノ・サイズでの演奏も披露された。ヴィオラ・ダ・ガンバに、ソプラノ、テナー、バスの3サイズがあることをそもそも知らなかったので、新鮮な驚きとともに、自分の中のヴィオラ・ダ・ガンバの世界が広がった気がして、とても嬉しく感じた。
 曲目の間に、他のお2人の奏者が解説してくださったバロック音楽の話も興味深かった。桑原さんは、ヴィオラ・ダ・ガンバが擦弦楽器、チェンバロが鍵盤楽器、リコーダーがエアリード楽器であることに注意を促し、それぞれ「こする、弾く、息を吹き込む」というように、音を出そうと思ってから音が出るまでのプロセスが異なることから、この3つの楽器で意気を合わせるのは、それなりに難しいのだ、という話をされた。また、山田さんは、音程の話をされ、現在のA(ラの音)はだいたい440Hz~444Hzだが、バロック時代はもう少し低い415Hzで、これを「バロックピッチ」と呼び、現代の音に馴染んでいる人にとっては、少し気持ち悪い感じがある、という話をされた(幸いと言うべきか、私はこの違いを聞き分けられない部類の人間だ)。そして、山田さんご本人はバロックピッチのリコーダーは所持しておらず、河本さんから声を掛けられて、知人に3本借りてこのコンサートにのぞんだとのことだった。以前、河本さんがギター奏者だった頃からの古いつき合いだからこそ、この度やってみよう、という気になったというお話をされ、それがとても心に沁みた。
 資料にある河本さんの経歴に「山口ガンバコンソート代表」という肩書が見られる。ヴィオラ・ダ・ガンバを始め、バロック音楽の息の長い普及活動の一端に、こうして地元山口で身近に触れられることを、あらためて有難いものだと感じたコンサートだった。


日仏協会会員 岡村和美

 3月31日はちょうど桜が満開で、花見客がおおぜい一の坂川沿いやスペース-赤レンガの芝生にたむろしていました。青空の広がる良い日よりでした。
 休憩をはさんで前半3曲、後半4曲、18世紀ドイツ、ハンブルグを中心にヨーロッパ各地で作曲、演奏活動を行ったテレマンの、リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロによるトリオ・ソナタを楽しみました。どの曲も軽快で、当時のヨーロッパ社会の流行の最先端を行ったというだけあって、華麗で親密感あふれる旋律は3つの楽器の演奏者の呼吸もぴったり合って、まるでダンスをしているようでした。
 リコーダーの山田英人さん、チェンバロの桑原奈緒子さん、ヴィオラ・ダ・ガンバの河本基實さん3人それぞれが演奏している楽器の特性、役割などを解説してくださり、楽器自体にも大変興味を持つことが出来ました。
 チェンバロは通奏低音だけではなく、主調旋律も弾くのだと、その弾き分けを実演してくださり、表情豊かな音の美しさに感動しました。
 リコーダーの山田英人さんの解説で、ハンザ同盟の自由都市ハンブルグの、都市独自の古い歴史を守り続けている静かなたたずまいのことなどがよく伝わってきて、密度の濃い雰囲気の中で音楽が楽しめました。
 大きなヴィオラ・ダ・ガンバともう一つ、小さなヴィオラ・ダ・ガンバがあり、当時の英国貴族の館では、催しが終わったあとそれらの楽器を演奏して楽しんだそうで、河本基實さんは小さなヴィオラ・ダ・ガンバを持ち出してみえ「リコーダーとトレブルガンバと通奏低音のためのトリオ・ソナタニ短調」の演奏がありました。
以前、日仏協会共催でルイ15世時代の宮廷音楽を演奏くださった時には、楽器の糸巻きのところに女神のような女性の彫刻があったのに、この度は擬人化した獅子の頭でした。使い分けておられるそうです。
 アンコール曲は大変素晴らしく、「リコーダーとヴァイオリンと通奏低音のためのトリオ・ソナタイ短調の1.2楽章」だそうで、鳴り止まない拍手に「これ一曲だけです」と言われ、会場は笑い声に包まれました。

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